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柚葉に関わったが最期、弱みを握られ下僕へと成り下がった者、叛旗を翻し返り討ちにあった者など数えればキリが無い。この学園での唯一のルール『滝川柚葉に関わるな』と。
(ヤバいヤバいヤバいぃ!!)
葉月の脳内で警鐘がけたたましく音を打ち立てる。思考云々ではない、本能が逃げろと叫んでいるのだ。
「た、助けて頂いて有難うございました。そ、そ、それじゃボクはこの辺で! さ、さよなら!!」
一応礼は返し、その場から一目散に逃げ去ろうと走り出す。しかしながら、一向に変わらない周りの景色。進む事の無い身体。何よりも葉月自身の肩へと重くのしかかる重力。それが一体何を意味するかなど、容易に理解は出来る。だが頭で理解出来ていようとも、恐怖で冷静さを失っている葉月には瞬時に理解しろと言うのは酷な話。
「何処へ行くのかなぁ?」
真後ろから聞こえる声。葉月の感情など一切お構いなく、意図も楽しげに。誰だかは言うまでもない。葉月の顔がみるみる内に蒼くなっていく。
逃れる事は出来ない、そう覚悟を決めて恐る恐る振り返ると、そこには――。
葉月の肩をしっかりと掴み、満面の笑みを……いや見方によっては邪悪な笑いを浮かべている暴君の姿が。
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