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取り出した写真を葉月へと突き付けて見せる柚葉。
「葉月ちゃんに見て貰いたかったのはこれ」
柚葉はさも愉快気に言い放つが、葉月の耳には一切届いていない。渡された写真を一枚、また一枚と目で追う毎に、葉月の顔色がどんどんと悪くなっていく。終いには真っ青となった表情で、動揺を隠せないでいる。
「ど……ど、どうしてこれを!?」
「上手く撮れているでしょ?」
悪戯っぽく片目をつむり、写真を奪い返す。
全ての写真に写っている人物、それは一之瀬葉月。ただし、今現在の葉月ではない。この学園へとやって来る以前の一之瀬葉月だった。
「まさか学園のアイドル、一之瀬葉月ちゃんにこんな秘密があるなんてねぇ~。皆が知ったら何て言うかな? どう思う、葉月ちゃん?」
何も言い返せない、ただただ絶句。硬直した身体はダイアモンドの様に硬くなっている。上手く声が出せない。それでも唸る如く、無理矢理に口を開く。
「……何が目的なの?」
その言葉が聞きたかったのであろう、待っていましたと言わんばかりに目を輝かせる。更に正確に言い表せば、獲物を捕らえた狩人の目とでも言おうか。
「そんなに警戒しなくても良いわよ。ちょっと私の手伝いをして貰うだけだから。よろしくね、一之瀬葉月――君」
その日を境に、一之瀬葉月の平穏と言う二文字は、音も無く崩れ去ったのは言う迄も無い。
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