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『僕達は一生、仲良しの双子でいよう』
『そうだねお兄ちゃん』
いつも通り、この会話で目が覚めてしまう。
「んっ……
もう朝か……」
煩く鳴るアラームを止め、伸びをする。
布団を退かすと、ベッドから足を垂らした。
「勇樹……
今頃何してるんだろうな……」
双子の弟の名を呼び、少し感慨深くなった。
それではいけないと思い、頬をパンパンと叩いた。
「さて……
お客様が来る前に……」
言い聞かせるように独り言を呟き、私は散らかった部屋から出た。
〇
洗面台で歯を磨きながら、寝ぼけた自分とにらめっこをする。
口を濯ぎ終えると、両手で水瓶を作り、自分の顔にかける。
「はぁっ……」
自分の顔を鏡で見る度、弟の顔が過ぎる。
一卵性双生児ということもあり、嫌気がさす程私達は似ている。
洗面台にかけてあったタオルで顔を拭き、すぐ隣の台所に向かう。
もはやお決まりになったトーストとサラダを食べながら、テレビで朝のニュースを確認する。
「やっぱり世の中不況ですね……」
ニュースを見て、そうため息をつく。
仕事上、不況のが景気は良いのだが。
それはあまりにも不謹慎なので、口には出せない。
身支度を一時間かけて済まし、私は出勤する。
〇
私が住んでいるボロアパートのすぐ目と鼻の先に、私が開業医をしている三田村診療所がある。
大学院を卒業してから数年、私は有名企業の社内カウンセラーとして働いていた。
まとまった金が貯まると、たまたま一人暮ししていたアパートの前にある外科医が医者を畳むというので、私はそこを借家のように借りることにした。
元から寂れた町医者なので、若い先生がおらず、時の流れとしては当たり前なのかもしれない。
表のCLOSEと書かれた標札のようなものを反対にし、OPENにしておいた。
受付嬢を雇う費用もないので、前の外科が使っていた受付に私が座った。
「参ったな……」
座って10分で退屈さに参り、頭を掻いていた。
「今日はお客さん0人ですか……」
そう呟き、受付の部屋にの壁にかけられた黒衣を手にとった。
医者がよく着ている白衣を黒くしたもの。
私は黒好き故、この黒衣を着ている。
やっぱりこれを着なきゃ、仕事の感じはない。
〇
暇過ぎる。
30分経ったが暇だ。
未だお客は0。
「はぁっ……
場所の立地が悪かったんですかね……」
私は机に伏せて、文句を言っていた。
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