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「大学の方が、何か?」
「はい、実は、『昔雨』の研究をさせて頂きたいのです」
そう言って、年齢不詳のその人は深々と頭を下げた。
それが、蔵河さんとの出会いでした。
「なーす服ハ、基本、白ダヨネ」「ある年代から他の色も出てきましたよね」
黒猫ぬいぐるみロボットは、残念そうに言う。「ソ。情緒モ何モ、無イ」
「ということは、『昔雨』に映るナース服の人物の年代を、大雑把に分ける事は可能でしょうか」真面目な表情で問いかける蔵河さんに。
「無理ダト、思ウヨー。趣味デ、着テイタ人ダッ」はい、強制終了。
力を込めて吉之助さんの頭を押し潰せば、手足をじたばた足掻く足掻く。
「あ、あの、隆登さん。そんなに力づくで押さえなくても」
取りなそうとする蔵河さんをも、ギロリと睨んで。
「ここがどこで、今していた話しが相応しいかどうか、解らないんですか?」
「…あ、あはは…」
いや、力無く笑って誤魔化そうとしても、無理です。
時想屋のカウンターでナース服談義とは。
談義に夢中に成り過ぎて、せっかく淹れた紅茶はすでに冷めている。
呆れながら吉之助さんから手を離すと。
「…ドウセ、客ナンカ、イナイジャン」
グーで殴っても許されると思う。
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