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「さてと…帰りますか」
ふうっとため息を吐き額の汗を拭う黄色のコートの青年が独り言を呟く。
出張任務が終わったらしく満足げに踵を翻した青年は、そのままここを去るつもりだった。
「なんでしょうか…?甘い…香りが」
黄昏時の柔らかな風に乗って来た甘い香りに鼻をくすぐられ、匂いの正体を探索するように帰路とは別方向に向いて歩き出す。
向かう先の繁華街から発生している食欲をそそる美味しそうな香りに無意識に足取りが軽くなる。
丁度黄色のコートのせいもあって、花を探すミツバチのそれと似ている気がするが、人に揉まれ随分ふらふらと歩く彼をミツバチとするなら相当危なっかしいミツバチだと言えよう。
場所が分からずしばらくさ迷っていると、大柄の男性にぶつかった。
結構な速度で歩いていたのか強めの衝撃を感じる。
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