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――テイガーがそこを通った。
ジャスミンの元に届け物を任され、偶然にもその路地裏を通り、現場を目撃したテイガーの目には5、6人の若者が統制機構の青年を襲っているようにとれた。
統制機構は第7機関の敵で、助ける必要などまったく無い。
むしろ助けたことが知れたら仲間に馬鹿にされるに違いない。
と、そう思ったがその右手は次の瞬間5、6人の若者達を一掃していた。
左手に届け物の桃饅頭を持ち替えて――
「黒お…グァッ!!」
男どもの悲鳴、共に身体から離れる手、その後すぐに打撃音。
しばらくして
「おい、大丈夫か?」
目まぐるしい周りの状態にパニックになり、先程まで掴まれ壁に押さえつけられていた手で自分の身体を守るように掻き抱く青年に声をかける。
コートで必死に素肌を隠すその手はガクガクと震えていた。
そこでテイガーは青年の異変に気がつき、驚かせてしまったかと不安になる。
「……?」
青年は声がかなり上から聞こえたのを感じて、一瞬びくついたが暖かな声に先ほど自分を襲っていた男達の仲間ではないと悟り声の主の方向を見た。
小さく首をかしげ、
「貴方は誰ですか?もしかして私を助けてくださったのは…貴方ですか?だったら、その…ありがとうございます」
「当たり前のことをしたまでだ、…礼には及ばん。」
間を置いて青年はそう言い、立ち上がってから頭を下げた。
立ち上がった青年はかなりスレンダーで、身体には男達に乱暴に掴まれた時の傷を残していた。
白い肌に赤が映え、痛々しい傷跡。
衣服も乱れ、カッターシャツはもう着ることも出来ないほどに裂かれていた。
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