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「こっちゃぁが、居間。向ごうが台所。ほんでもってさ、ここが休養室。ここで休んだったり、なんだりやっさかいのぉ、覚えとくがいいがや」
そして老婆はスタスタと廊下を進む。
テキパキとした説明と止まることのない足。
あまりの早さに私は少しだけ圧倒された。
これを一気に記憶…しかも一度きりしか教えてくれないということなので、私は一つも見聞きし損ねないよう、必死に老婆の後を着いていった。
「んで、ここがあんたさの部屋になる物置部屋だ。わがんねぇごとあっだら、聞け。一度だけなら答えたるきんに、まぁ…失敗したら元も子もないかんのぉ」
フンッと鼻で笑いながら、老婆は私にそういった。
私は一瞬苦笑いを浮かべながらも、すぐキッと真剣な顔つきになって老婆に頭を下げた。
「…これからお世話になります!至らぬこともあるでしょうが、精一杯お勤めいたしますので、何卒よろしくお願いします!」
「…フン、まぁ…精々頑張るこったぁね」
目線を上げると老婆は冷たい視線を向けながら私を見下ろしている。
私はグッと唇を噛み締めた。
(―ここからが始まりだ…!―)
そして私は、状態を起こし、もう一度老婆に向き直ると視線を合わせる。
「…目付きと根性だけは合格じゃな。仕事はさっき一通り説明した通り、清掃、家事、洗濯、十四楼様の身の回りの世話、そして、一番大事なのが十二月三十一日家の見回りじゃ。最後のはあんさんの希望でもあると聞いたさかい、だけんども…迷惑だけは起こさんよう、気ぃつけぇや?」
ごくり…と唾を飲み込みながら、私はハイッ!と返事をした。
「…んじゃ、今日は終わりじゃけとっとと寝ぇ。明日は早いからのぅ…あ、そうそう。言い忘れとっだが、あたしゃ侍女を束ねる婆やの水篠 楓(ミズシノ/カエデ)じゃ。なんか問題あっだら訪ねぇ。名前言わな、誰だかわかりゃせんからの」
そうして、老婆改め水篠さんは踵を返すと、また、明日とスタスタ自室へと帰っていった。
あぁ、明日から本当の本当に始まる。
私は気合いを入れると、自室となった部屋の中に進んでいった。
さぁ、明日から頑張るぞっと意気込んで。
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