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サクッ…。
乾燥した暖かな芝生で出来た道を十四楼様と歩く。
夏の暖かさの所為か、まだほんのりと温もりが残る庭は、なんだかとても胸が切なく…だけどホッとするそんな気持ちにさせる。
私はこっそりと十四楼様を盗み見た。
「……………ん?」
少し間を開けて、私の視線に気づいた十四楼様が私の方に顔を向ける。
私は顔を赤くしてサッと顔を地面に逸らした。
「す、すいません!ジロジロと…」
「いや、別に構わないよ?
君に見つめられるなら私も嬉しく思うから」
その言葉に私はますます顔を赤くする。
「………クスッ、可愛いな」
「…え?」
十四楼様の呟きに私はまだほんのりと赤い顔をそっと上げ、彼を静かに見た。
その時、ふわりと影が落ちる。
優しげに微笑む顔が見えたのも束の間、私は気づけば十四楼様に唇を奪われていた。
混乱する頭の中で私の体は微かに熱くなり、胸も激しく鳴り響いて今にも蒸発してしまいそうだ。
何故彼が私に口づけをしているのかわからない。
でも…今だけはこの甘い時間に身を委ねていたい。
そう思うのは…罪でしょうか?
そう私が思った瞬間…ポツ…ポツ…と雨が降りだした。
「…雨が、降ってきたね…おいで、あちらの離れで休もう」
頬を赤らめさせたまま私はそっと頷くと、彼の手をとって共に離れへと向かった。
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