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ザァ―――――…
「雨、本降りになってきたね…」
「そう…ですね」
雨足の強まる中、二人は空を見上げてそういった。
視線を下ろすと、雨戸がごうごうと激しく波立っている。
「…羅刹さん、寒くはない?」
そういって十四楼様が優しく肩を抱く。
「あ、あの…!」
「しっ…、今は静かに…疑問は胸の奥に仕舞って…?」
口元に指を当ててからそっと自分の胸を指先で叩く。
私は口を紡ぐと、静かに項垂れた。
「ごめんね…?君に話すことができなくて…
でも、いつかは話すから…何故、そうしたのか、私のこと………そして、君のことを…全て」
そして、彼は遠くを見つめた。
「…一つだけ、質問は駄目でしょうか?」
「…いいよ、答えてあげよう…ただし、本当に一つだけなら…」
私はそういわれて考える。
本当にそれでいいのか。
他に気になることはなかったか。
自問自答した結果、やはり私の気持ちは変わらなかった。
「…何故、急に………私を知っていたの?」
「…そうだね、気づいたのは昨夜だけれど…確かに君を知っていたよ?…ずっと昔からね…」
だから、君にこう接したんだ。
君に…牽かれてしまっていたから。
いつからからかはわからないと言いながら、その思いを彼は口にした。
昨夜思い出すまでは、今日みたいな行動をとるとは夢にも思わなかったと。
私はそんな彼の言葉に僅かに頬を赤らめる。
でも…まだ、一つだけ疑問は残る。
何故、私も彼を好きでいるのか。
それがすごく不思議だった。
だけど、何故だかわかる気がした。
彼の顔を見て、彼の声を聞いて、確かに遠い昔に出会った気がすると…。
彼が優しく私に触れる。
あぁ、知っている。
私はこの手を…この温もりを…。
あれは…
「…時間だね」
十四楼様が静かに呟いた。
その声で私はハッと意識を戻す。
十四楼様は遠く庭先に視線を向けていた。
釣られて見ると、水篠さんが十四楼様を探す姿が見えた。
「…残念、まだ二人だけの時を過ごしたかったけど…仕方ないね」
そう苦笑して、十四楼様は「行こうか?」と手を差し伸べる。
私はそっとその手を取ると、いつの間にか弱まった雨足の中、屋敷の中に向けて走り出す。
楽しくて、幸せな時間。
私は緩む表情を隠せないまま、彼の後ろを連れ立って走る。
これから幸せな未来が続くような気がして、私は胸を高鳴らせた。
あぁ、そうか。
これが…“恋”というものなんだ…―
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