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―――コン、コン、コン…
私は静かにドアを叩く。
「どうぞ」
しばらくして中から涼やかな声色で声が帰ってきた。
「失礼します」
私はその声に答えるように、ゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れる。
そして、涼やかな声色の持ち主の方へ向き直ると一礼した。
「…あら、あなた見ない顔ね…新入り?」
私とそう変わらない年代の淑女が椅子に腰掛けながらそう問いかける。
私は少し首(こうべ)を下げながら口を開いた。
「はい、宮前 羅刹といいます。どうぞご用がございましたら何でも仰ってくださって構いません」
ニコッと笑みを浮かべて私は客人を見る。
客人はふーん、と私を一別すると、ガタッと席を立った。
「いいわ、宮前さん。では、手始めに私に紅茶を入れてくださらない?もう喉がカラカラなのよ」
「畏まりました、今すぐご用意いたします」
私は客人の命に従うと、さっと紅茶を用意し始めた。
「…どうぞ、アイスやミルク、ストレートはお好みで」
「あら、早いのね?ありがとう、頂くわ」
そういって客人はにこやかに微笑みながら紅茶を楽しむ。
「…んー、いいわねぇ…紅茶はギャルかしら?」
「はい、お口に合うとよろしいのですが…」
「大丈夫よ?私、ギャル好きなのよね」
そう笑顔を浮かべ続けながら、静かに容器を机に戻す。
「ねぇ、聞いていいかしら?」
「はい?何でしょうか?」
「あなた、外国にいたことはあって?」
客人の問いに、私は目を見開く。
「えぇ、確かに少しばかりいましたが…」
「やっぱり!そうだと思った!」
肯定した私の声を遮るように客人は嬉しそうに椅子から立ち上がった。
「見ててわかったの!あたってよかったわ!ねぇ、よかったら少しお話ししません?きっと楽しいわ!」
私の手を引きながら客人は捲し立てるように喋る。
私はその勢いに圧倒されながら、進むがままに客室の長椅子に二人並んで座った。
「それで、何から話そうかしら…あっ!でもその前に私、まだ名乗ってすらなかったわね?私、凩…凩 魅夜(コガラシ/ミヨ)っていうのよ」
「凩…様ですか?」
「そう!あ、でも凩は硬いから魅夜でいいわ」
「では、魅夜お嬢様ですね」
「うーん、まだ硬いけど…まぁいいわ!さ、お話ししましょうか!」
笑顔で私の手を掴んだまま、魅夜お嬢様は凄く楽しそうにお喋りを始める。
そんな姿に思わず自分も笑みを浮かべて話を繋げた。
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