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楽しく二人で話をしていると、ギィー…と部屋の扉が開いた。
「…まだ、いたのか?」
「…あ」
「あっ!十四楼様っ♪」
部屋に入ってきたのは十四楼様で、その姿が見えた瞬間、横にいた魅夜お嬢様が、彼に寄り添うように抱きつく。
私は目を白黒させ、二人を見た。
「あの…お二人はどういった間柄なんですか?」
仲睦まじく映る光景に、私は思わずそう口にする。
すると、「あら」と振り向いた魅夜お嬢様が、凄く幸せそうな顔で語った。
「いってなかったかしら?私たち許嫁なの、秋には正式に夫婦の契りを結ぶのよ」
「え…」
その言葉が頭に染み渡る。
受け入れがたいその言葉に私はただ笑うしかなかった。
幸せそうな二人に醜い心を見せたくないからと…。
「そ、それはおめでとうございます!楽しみですね!どうぞ、お幸せになってくださいね」
「ありがとう、あなたならそういってくれると思ったわ」
ニコニコと笑顔を向ける魅夜お嬢様がとても眩しく見えた。
その影で十四楼様がどんな顔で、どんな気持ちで立っていたかなんて気づかず、私は感情を圧し殺して二人に祝福の言葉を紡ぎ続ける。
例えまざまざとした感情が広がろうと、これは仕事だと…私情を挟んではいけないと言い聞かせなければ、すぐ潰れてしまいそうで…私は自分を支えるために彼らを祝福したのだった。
すると、十四楼様がカツン…と歩み寄って、私と魅夜お嬢様の間に割るようにして立つ。
その目は酷く冷えたように、私には映った。
「…もういいでしょう?あんまり世辞ばかりも聞けませんし、第一時間ももう遅いです…今日は切り上げてまた日を改めて語られたらどうですか?それに、魅夜さんは凩家の大切な令嬢…あまり引き留めていては世間的にも、あなたの家やあなた自信にもよくないですからね…ですから、今日はもうお開きにしましょう、羅刹…魅夜さんを自宅までお送りして差し上げなさい」
「っ!はい…っ!」
十四楼様の威圧した空気に飲まれかけながら私は潔く返事を返す。
魅夜お嬢様は嫌そうに文句をいっていたが、十四楼様の眼力に負けたのか渋々と承諾し、私に荷物を預け、部屋の出口へと向かった。
「では、お邪魔しましたわ!また明日お邪魔する予定ですので、覚えておいてくださいなっ」
「あぁ、わかったよ…気をつけてね」
そう微笑む十四楼様に魅夜お嬢様はふんっと背を向けると部屋を出ていく。
私はそれに慌ててついていった。
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