第参章―罪人の華―

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「なら、好きにすればいいのではなくて?」 「え?」 「あなたが思うように、したいように、生きたいように…柵(しがらみ)に囚われたままではいい判断は出来ないわ」 お嬢様はそう付け加えると、優しく微笑んだ。 「あなたは、あなた…あなた自身のことは、あなた自身で決めればいいのよってこと!さっ、お茶を続けるわよ!」 そしてまたニコニコとお茶を点て始める。 私は、お嬢様がいった言葉に気持ちが軽くなった感じがした。 私は私…自分にとって最善と思うことをする…。 なら私は…どうする? 答えは既に決まっている。 私は、無邪気に笑うお嬢様と向き合うと、感謝の気持ちも含め、自分もまた楽しみながらお茶の時間を過ごした。 夜になり、お嬢様を送り届けた私は、主人である十四楼様の部屋を叩いた。 「どうぞ」 「失礼します」 部屋に入ると、少し手先が震える。 それでも私は真っ直ぐに彼を見た。 「それで?私に何か用事ですか?」 「…来週で屋敷の任が解かれます」 「…そうだね、それで…?何が言いたいの?」 そう目線を向ける十四楼様に私は一息おいて口を開く。 「…私は、あなたやお嬢様のような人のもとに仕えれて、本当に幸せに思いました。ですから…出来ればもっと長くお仕えしていたかったと思いました」 「…わざわざ、そんなことを言いに来たの?別に…任が解けたからといって立ち入りが禁止になるわけではないし、いつでも来ればいい…私のそばでずっと、一人の女性として…」 その言葉に私は首を振る。 「…出来ません、私…この仕事が終われば、遠くに嫁入りすることが正式に決まってしまったので………ですから、もう…」 そこまで口にした時、ガタンッと椅子が倒れる音がし、気づけば私は十四楼様に抱き締められていた。 「じ…十四楼様?」 「…赦さない」 「…え?」 「君が誰かのものになることなど、私が赦さないっ!」 グッと力ずくで私の顎を上げると、激しくて熱い口づけを交わす。 「だ…駄目です、十四楼様!私は…」 「…私は、世界を裏切ってでも、君を愛する…婚約だって解消する…だから、私だけのものになってくれ…っ」 十四楼様の言葉に私は胸が打たれる。 初めて私が愛し恋した人…。 結ばれたなら幸せになれるだろう…けど、でも…
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