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「ふあぁ…」
朝、寝不足の私は重たい瞼を無理やり持ち上げ、何とか仕事をこなしていた。
だが、暑い日差しと、配達先への道路(ミチジ)が遠いという最悪な組み合わせから、私の体はすでに限界点にまできていた。
もう立つのすらやっとで、倒れそうになるのを必死に堪えながら道路を進んでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ…何で…よりにもよって、今日の配達はこんなにも遠いのよ…!!」
私は、そう言って日陰のある路地に座り込んだ。
「はぁ…、暑い…」
ジリジリと照らす太陽を見つめながら、ポツリと呟く。
「なんで、今日はこんなにも暑くなってるんだろう…?」
そう言った瞬間、私はやる気が段々と消えていくのを感じた。
私は、汗を拭うと、スクッと立ち上がる。
「いつまでもこうしてたら、余計に怠(ダル)くなるだけだわ!さっさと、配達をしよう!!」
そして、荷物を持ち直すと、再び走り出した。
蝉の鳴き声が響く。
私はようやく目的地に辿り着いた。
「ふぅ…やっと着いた。けど…広っ、玄関どこなんだろう?」
しかし、辿り着いた場所はとてつもなく広い豪邸だった。
私は、がっくりと肩を落としたまま庭らしき場所をウロウロしていた。
「人の家で何してるの?お嬢さん」
不意に、後ろから声をかけられて私は吃驚した。
しかし、次の瞬間には目を見開いてまた違う意味で驚いた。
何故、あなたがココに…?
あまりに突然すぎて私は驚愕のあまり倒れてしまった。
「…っ!いたたたっ…」
私は、地面に座り込みながら腰を擦る。
人前でこんなドジを踏むとは我ながら恥ずかしい。
そう思った私は、直ぐ様立ちあがろうと体を起こそうとした。
しかし、足を挫いたのか、立ち上がる事が出来ない。
私は、溜め息を吐いて項垂れた。
すると、行き成り目の前にスッと手が差し延べられた。
「すみません!大丈夫ですか?」
その人は心配そうに問いかける。
けれど、私は心ここに非ずで放心してしまった。
すると、その人は私の顔を覗き込むとそっと足に触れる。
「怪我をしたんですか…?…すみません…、すぐ、手当てをしますね…」
彼はそういうと、私を姫抱きするように持ち上げた。
私は、その行動にびっくりして、小さく叫び、赤面する。
男の人は、そんな私に微かに笑みを浮かべると…屋敷の方に向かって歩き出していった。
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