第壱章―華の咲き始め―

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「ふあぁ…」 朝、寝不足の私は重たい瞼を無理やり持ち上げ、何とか仕事をこなしていた。 だが、暑い日差しと、配達先への道路(ミチジ)が遠いという最悪な組み合わせから、私の体はすでに限界点にまできていた。 もう立つのすらやっとで、倒れそうになるのを必死に堪えながら道路を進んでいた。 「はぁ、はぁ、はぁ…何で…よりにもよって、今日の配達はこんなにも遠いのよ…!!」 私は、そう言って日陰のある路地に座り込んだ。 「はぁ…、暑い…」 ジリジリと照らす太陽を見つめながら、ポツリと呟く。 「なんで、今日はこんなにも暑くなってるんだろう…?」 そう言った瞬間、私はやる気が段々と消えていくのを感じた。 私は、汗を拭うと、スクッと立ち上がる。 「いつまでもこうしてたら、余計に怠(ダル)くなるだけだわ!さっさと、配達をしよう!!」 そして、荷物を持ち直すと、再び走り出した。 蝉の鳴き声が響く。 私はようやく目的地に辿り着いた。 「ふぅ…やっと着いた。けど…広っ、玄関どこなんだろう?」 しかし、辿り着いた場所はとてつもなく広い豪邸だった。 私は、がっくりと肩を落としたまま庭らしき場所をウロウロしていた。 「人の家で何してるの?お嬢さん」 不意に、後ろから声をかけられて私は吃驚した。 しかし、次の瞬間には目を見開いてまた違う意味で驚いた。 何故、あなたがココに…? あまりに突然すぎて私は驚愕のあまり倒れてしまった。 「…っ!いたたたっ…」 私は、地面に座り込みながら腰を擦る。 人前でこんなドジを踏むとは我ながら恥ずかしい。 そう思った私は、直ぐ様立ちあがろうと体を起こそうとした。 しかし、足を挫いたのか、立ち上がる事が出来ない。 私は、溜め息を吐いて項垂れた。 すると、行き成り目の前にスッと手が差し延べられた。 「すみません!大丈夫ですか?」 その人は心配そうに問いかける。 けれど、私は心ここに非ずで放心してしまった。 すると、その人は私の顔を覗き込むとそっと足に触れる。 「怪我をしたんですか…?…すみません…、すぐ、手当てをしますね…」 彼はそういうと、私を姫抱きするように持ち上げた。 私は、その行動にびっくりして、小さく叫び、赤面する。 男の人は、そんな私に微かに笑みを浮かべると…屋敷の方に向かって歩き出していった。
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