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「え、人間のお屋敷で小間使いを?」
あの後、一応親族に了承を得てからの方がいいと、私は家に帰らされていた。
「お母様、小間使いではなくて、ただのお手伝いなのですが…」
「似たようなものです。しかし、迷惑をかけたのならそれは致し方ありませんね。わかりました、あなたの気がすむようにしてきなさい」
お母様のその言葉に私は嬉々とした表情を見せた。
「ただし。掟を破るような事をすれば、すぐに呼び戻しますからね?いいですか?」
念押しのようにそう告げる母を見て、私は少し表情を曇らせて俯いた。
そう、私の一族にはある掟がある。
それは、一族以外を愛してはいけないというものだ。
私たちは羅刹という鬼の一族で、今から約200年ほど前から人間たちの中で人間のように暮らしている。
しかし、羅刹は決して他の者の血を受けつけることは出来ない。
そのため、一族を分散し、他から見たら他人にしか見えないようにした。
これなら、一族同士でも、怪しく見られない。
元々人間の世界には、将来結婚するための許嫁というものもあるから、例え他人過ぎても、仲良くし過ぎても許嫁と言えば済む。
そうやって、私たち一族は同族の中のみで繁栄してきたのだ。
だけど…私はこの決まりが幼き頃から嫌いだった。
生まれる前から結婚するべき相手が決まっているというのは、将来がすでに決定してることだから。
自分で自分を自由に出来ない。
心を殺して生きなければならない…それが、とてつもなく、嫌だった。
私は、母様との話を終えると、寝室に戻った。
出来ればもう、何も考えないでいたいと思ったから。
私は、布団に入り込むと静かに瞳を閉じた。
そして、明日から始まる新しい仕事、職場に胸を少しだけ踊らせた。
少女は知らない。
この時、それとは別に芽生えた感情の名を…。
トクン…。
眠りにつく少女の鼓動が静かに脈を打つ。
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