good-bye..

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RiRiRiRiRiRiRi…― ――――― この家に昔からあるちょっと汚い電話がうるさく鳴り響いている。 受話器に手を伸ばす青年。 「はい!こちら松坂!」 「あぁ‥秀輔か。ちょっと用があるんだが‥どうせヒマだろ?」 電話の向こうでは、低く渋い声が聞こえた。 「監督!!おっしゃるとおりヒマですめちゃくちゃ!!」 「じゃあ今から学校こい。いい知らせだ。」 「何ですか!?もしかして‥」 監督は話が長くなる事を予測し、強制的に電話を切った。 「‥母さーん!」 まぁいつものことだ、と慣れているためたいした反応はしない。 「どうしたの?誰から?」 奥から出てきた母親は細身の体で若々しい。 「監督!学校こいってさ。自分がくればいいのにさ!」 松坂はぷくーっとふくれっ面をした。 「あら‥じゃあ買い物はなしにするから行ってらっしゃい。」 本来ならば今日は大手スポーツショップに行く予定だった。 ヒマじゃないくせにヒマだと言うのはどうなんだろうか。 「ごめんな母さん。じゃあ行ってきまーす!」 ガチャン!とドアを開けて勢いよく出て行ったのは、この物語の主人公の松坂秀輔である。 ちなみに秀輔が向かったのは家から歩いて約50分のところにある横浜中学校。 つい最近、全日本の中学野球総体で優勝をなしとげ、引退した。 「はぁ‥今日はお父さんの誕生日だったのに‥しょうがないから1人で買い物に行こうかしら。」 予定が変わってしまったので母は少し落ち込んでいた。 秀輔は毎日登下校はランニングで行っている。 最初は疲れたが、今ではかなりの速さで走っている。 バックを持ったまま走るその姿は、近所では24時間マラソンじゃないかと言われている。 そんな訳はないのだが。 松坂家では小柄な柴犬を飼っていて、名前は『タイヨウ』。 えらく利口な犬で危険がせまったり不安を感じ取るとよく吠える。 本人いわく、 「タイヨウは予知犬だ!ちなみに名前はカタカナでタイヨウだぞ!」 そこは譲れないらしい。
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