good-bye..

7/21
前へ
/275ページ
次へ
――――――― 9年前…― 父、松坂浩輔が死んでから2週間‥ 松坂の目に光はなかった。 「‥‥」 だらりと壁にもたれかかる松坂。昼間からずっとこうしている。 「秀、お腹‥空いたよね?」 百合子が気を遣って言った。 「‥」 無言は続く。 「お母さんご飯作ろうか!あんたろくなもの口にしてないでしょ?」 松坂は父の死のショックから立ち直れず、ただ壁にもたれているだけの人形のような状態だった。 「ねぇ聞いてる?」 「‥イラナイ」 たまにしゃべった声はか細く、涙で目は真っ赤だった。 母ももちろんショックだったが、自分が親である事を再確認し、なんとか1人で涙を押し殺していた。 しかし、ただの抜け殻の秀輔を見るとつらい。その思いのせいで間違って秀輔にあたってしまう。 「ぐずぐずしてないでシャキッとしなさいよ!男のくせに!!」 自分でも分からないうちに言ってしまっていた。そしてすぐ後悔したが、もう遅かった。 「なんだと‥」 秀輔もわかっていた。このままじゃダメなことくらい。だから改めて親に言われると腹が立ち、逆ギレしてしまう。 「あんたがこんなんだとお母さんが大変なの!!」 もう止まらなかった。 「じゃあ俺が出て行けばいいんだな。」 秀輔は重い腰をあげ、夜遅いのにも関わらず出て行ってしまった。 「もう‥知らない!」 2人とも精神状態が普通ではなかった。というより、普通ではいられなかった。 母が寝てしまおうとした時、ベルが鳴った。 「誰よこんな時間に‥」 ガチャンとドアを開ける。 立っていたのはキリッとした顔立ちでかなり体格のよい、スーツを着た男の人。 「夜分遅くに申し訳ございません。私は神奈川県警の佐倉という者です。松坂百合子さんでしょうか?」 松坂百合子は秀輔の母である。 「はい‥」 母なぜ警察が家に来たのかすぐに把握できなかった。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加