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暫く余韻を楽しむかのような沈黙が続いた。きっと外では暗闇に包まれ星が輝きと色彩を競っていることだろう。
しかし、そんな二人の甘美な時間を大きな物音が断ち切った。部屋のすぐ外で分厚い木の板を引き裂くような音がしたのだ。
素裸の二人に緊張が走る。ベッドから上半身を起こして抱き合った。愛し合う二人としてではなく、怯える小さな人間同士として。
再び壁を引きはがすような激しい物音。その直後に扉のすぐ外側で女性の悲鳴が響く。
ゴキブリや鼠を見つけたときの悲鳴とは明らかに違う。肉体を切り裂かれるような断末魔の悲鳴だ。
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