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義人は一通り状況を把握すると瑞樹の両手を取った。
「ここから逃げよう」
「いやだわ。私ここにいたい」
「さっきの物音聞いただろ。とんでもない奴が扉のすぐ外にいるかも知れない」
瑞樹は義人の優しい語り口に落ち着いたのだろうか。小さく頷いた。
「よし。いい子だ」
義人は瑞樹手を取り自分の胸元に引き寄せる。しかし瑞樹の大きめの眼球が左右に震える。そして義人の両肩を手で突き放して言った。
「でも……どうやって逃げるの? 扉には鍵がかかってるし、ここは五階よ。落ちたら死んじゃう」
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