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「もし部屋の鍵が開いたとしても、扉から出るのは危険だよ。すぐそこに奴がいる」
瑞樹はそれを聞いて目を潤ませる。
「逃げる方が危ないじゃない」
瑞樹の頬を二筋の涙が伝う。義人は瑞樹の頭の後ろに両手を回して抱きしめた。
「きっと助かる。何かいい方法があるはずだ」
突然扉の外で鉄アレイを投げつけるような重く鈍い音が響く。二人は息を殺して外の様子に耳を欹てた。
『お願い……ぉ願ぃだから殺さないで』
外では女が虫の鳴くような声で命乞いしている。その直後に臓腑を引き裂くような音がした。
『やめ……て』
そして女が倒れる。扉の外はしんと静まり返る。
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