1530人が本棚に入れています
本棚に追加
瑞樹は小さく息を吐く。
「扉の向こうには行きたくない」
「じゃあ窓から逃げよう」
「え? 窓から?」
「そう。窓から一階に降りる」
「でもどうやって? 避難階段も縄梯子もないでしょ」
「知ってる」
義人はそう言うと、固く閉じられた南側の木戸を開け放つ。分厚いガラスでできた窓が姿を現す。
窓の右端にはレバー式の大きなフックがついていた。
義人はレバーに手をかけると手前に引いた。ガクッという重い音がしてロックが外れる。義人は窓を外側に向かって開け放った。瑞樹が駆け寄って外を見る。義人も窓の下を見下ろす。
「絶望的だわ。こんなに高いところからは降りようがない」
「まだ諦めちゃだめだ」
そう言うと今にも床に倒れ込みそうな瑞樹の体を支えるように抱きしめた。
.
最初のコメントを投稿しよう!