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「フレッド=レインは窓から一階に降りた」
「え? どうやって?」
「ベッドの上にシーツがあるよね。彼はそれを幅十センチメートルくらいに引き裂き、結び繋いで一本の長いロープを作った」
「そっかあ。シーツのロープで降りたんだ」
「その通り。シーツのロープには結び目があるから、それが滑り止めにもなる。この部屋に材料はある」
「でもここは五階。三階とはわけが違うわ。シーツの丈だって、足りないさそう」
瑞樹は表情を曇らせる。
「確かに目の眩むような高さだ。間違って落下したら、まず命はない」
「私、下りられない。気を失いそうよ」
窓から湿気を含んだ空気が室内に流れ込んだ。時刻はまだ午後八時半。窓からは光に彩られた夜の街がよく見渡せる。
「瑞樹が無理なら仕方がない。他の方法を考えよう」
義人は瑞樹の手を取る。瑞樹は暫く義人の指を弄っていたが、ふと目線を天井に向けた。
「ねえシト。携帯で警察に知らせようよ」
義人は一瞬戸惑う。確かに警察に知らせれば助けが来るだろう。しかし義人には知られたくない事情があった。
「だめだ」
「でも緊急事態よ。人が殺されたわ。きっと扉の外には死体が転がってる」
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