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水原は画面を切り替えた。ディスプレイに二つのウィンドウが開き、何かが映っている。
「これは」
「はい。作戦通り二人は小型の赤外線カメラを設置できたようです。右側が瑞樹さんのカメラ。左側が珠樹さんです」
広角カメラなので置かれた場所の様子が何とかわかる。瑞樹は部屋の中にいるようだ。画面に窓は映っていない。
珠樹はおそらく違う場所。小さめの部屋の中だ。珠樹のカメラに人影が映った。
義人はレンタル携帯を取り出すと瑞樹に電話をかける。
「もしもし。ぼくだ、シトだよ」
『シト! 今どこにいるの?』
「工場のすぐ外にいる。どこから入ればいい?」
『厨房の反対側の倉庫から中に入った。でも幽霊がウヨウヨいる』
「幽霊?」
『そう、幽霊。白っぽくて浮かんでてみんな酷い顔をしている。私きっと何度もお漏らししたわ』
瑞樹が幽霊の話をしてすぐ、義人と水原の前を何か白い物が通っていく。
浮遊する白い光の集合体。それが人の形を浮かび上がらせている。音もなく浮遊して過ぎていった。義人も水原もゴクリと唾を飲み込んだ。
「ここにもいるよ」
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