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二人は何十体もの幽霊をすり抜け、工場の北東の倉庫にたどり着く。倉庫の入り口には鍵がかかっていた。義人は鍵束を取り出すと、片っ端から鍵穴に入れようとする。なかなか上手く行かない。
「冴島さん。これですよ」
水原が鍵束の中から柄の部分がすり減った鍵を見つけて言った。
水原が穴に差し込むと、ガチャリという音がしてロックが外れる。
すぐに二人は中に飛び込んだ。
「どうしてすぐに鍵がわかった」
義人は水原に尋ねる。
「簡単です。よく使う鍵は磨り減るもんです」
二人は懐中電灯で中を照らす。義人は足下の障害物を避けようとして仰天した。
そこにあるのは血まみれの死体。一つや二つじゃない。あちらこちらにゴロゴロと転がっている。
義人も水原もこれにはさすがに耐えきれない。水気を含んだ腐臭と工場の錆の臭いが交じり二人の鼻を抉る。
「何処かに殺人鬼がいる」
水原はスタンガンを取り出して身構えた。
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