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『うぅ。やめて』
『喋るんじゃない。静かにしないと瑞樹の命はない』
義人は一刻の猶予もないと判断した。すぐに雅也のいる部屋の扉に取り付き、扉を開けようとする。
『やめて。触らないで』
『黙ってろ。瑞樹さんがどうなってもいいのか?』
ヘッドホンから、珠樹の嗚咽が聞こえてくる。
「だめだ。鍵がかかってる」
「冴島さん。これです」
今度も水原が素早く鍵を見分ける。義人は部屋の鍵を開け、急いで中に飛び込んだ。
そこには、裸同然の珠樹の姿があった。義人の姿を認めると大声で泣きながら抱きついた。
「恐かっただろう。もう大丈夫だ」
義人は珠樹の頬を伝う涙をハンカチで拭う。水原は珠樹の服を拾い背中にかけた。雅也は人の気配を感じてすぐに逃げたのだろう。部屋の奥の扉が開いていた。
義人は走って扉の向こうを確かめる。
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