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瑞樹の小さな掌から義人の太股に、血の温かさが伝わってくる。
信号が青に変わり、ポルシェは低いエンジン音を響かせて走り始める。次の交差点を右折すると駅裏の通りに差し掛かる。背が低いビルの中にひときわ背の高いビルが目立って見えた。淡い紫と白でライトアップされている。「カルーア」という名前のファッションホテル。
目隠しのビニールをくぐり抜けると、義人はポルシェを駐車場の一番奥に停めた。
「ここには来たことあるの?」
車を降りロックをしながら義人が尋ねる。
「昨日初めて入ったわ」
瑞樹は自動ドアを抜けフロントパネルの前に立つ。義人は、手頃な部屋を選ぶと瑞樹をエレベーターにエスコートした。
「そっかぁ。昨日も来たんだ」
義人は瑞樹が昨日ここで、どんな男とどんなことをしたかを詮索しなかった。尋ねられる瑞樹にとってあまり気持ちのよいことではないだろう。
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