1 密室

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 瑞樹の小さな掌から義人の太股に、血の温かさが伝わってくる。  信号が青に変わり、ポルシェは低いエンジン音を響かせて走り始める。次の交差点を右折すると駅裏の通りに差し掛かる。背が低いビルの中にひときわ背の高いビルが目立って見えた。淡い紫と白でライトアップされている。「カルーア」という名前のファッションホテル。  目隠しのビニールをくぐり抜けると、義人はポルシェを駐車場の一番奥に停めた。  「ここには来たことあるの?」  車を降りロックをしながら義人が尋ねる。  「昨日初めて入ったわ」  瑞樹は自動ドアを抜けフロントパネルの前に立つ。義人は、手頃な部屋を選ぶと瑞樹をエレベーターにエスコートした。  「そっかぁ。昨日も来たんだ」  義人は瑞樹が昨日ここで、どんな男とどんなことをしたかを詮索しなかった。尋ねられる瑞樹にとってあまり気持ちのよいことではないだろう。 .
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