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なにやってんだよ、と思いながら、勇は倒れたマグカップに手を伸ばす。マグカップに触れる直前で、手と手が重なった。
「あっ……」
声も重なる。
温かい感触に、二人の時間が、一瞬止まった。
「わ、悪い」
正気に戻った勇は、手を引き戻そうとする。だがナナの手が、それを阻んだ。
「ナナ……?」
気付いたときには、目の前にナナの顔があった。潤んだ瞳でこちらを見つめている。
「私の……なんだから」
ナナは呟き、瞳を閉じる。
柔らかい感触が、唇を支配した。
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