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旅人はついに膝をついてしまいました。
歩くことも立つこともままなりません。
長い間歩き続けたその両足はもう使い物にならなくなってしまったのです。
旅人は悔しがりました。
ここで旅が終わってしまうことを。
自分はまだ、世界を歩けていないことを。
旅人はあまりにも悔しくて涙が出てしまいました。
目の前の視界がぼやけます。
ふと、ぼやけた視界の中に光が見えたような気がしました。
旅人は乱暴に涙をぬぐうと光を見つめました。
その光の中心には、幼い頃の旅人がいました。
幼い旅人は旅人を見て無邪気に笑っています。
旅人は気づきました。
今までのあてどない長い旅の目的を。
旅人は幼い自分に言いました。
「―そうだ、僕は君に会うために歩いてきたんだ」
そう言うと幼い旅人は笑いながら言いました。
「まだ終わってないよ。これから旅は始まるんだから」
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