1人が本棚に入れています
本棚に追加
最初に旅人が足を踏み入れたのは近くの森でした。
その森は小鳥たちの楽園でした。
旅人は思い思いにさえずっている小鳥たちに考えを馳せながら歩いていました。
「―旅人さん、旅人さん」
不意にどこからか呼ばれました。
立ち止まって声をするほうを見ても、何も見えません。
空耳かと思い、旅人は歩き出そうとしました。
するとまた、今度は大きめの声で
「旅人さん」
と呼ばれました。
もう一度立ち止まって辺りを見渡してみると、長い尾を持った黄色いインコのような小鳥が近くの木に止まっていました。
小鳥は黒くつぶらな目で旅人を見つめています。
まさかありえないだろう、と思いながら、旅人は小鳥に話しかけました。
「やぁ、黄色い小鳥ちゃん。僕を呼んだのは君かい?」
「ええ、そうよ。旅人さん」
旅人は驚いて固まってしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!