Ep.first

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小鳥はそんな旅人を見てからからと笑いました。 「鳥だって喋れますのよ。ただ、人間の前では喋らないだけなのよ?」 旅人は脱帽しました。 「いや、すまないね。これだから人間ってやつは目の前のことしか信じない」 「いいのよ、旅人さん。私たちだって話せることを知られたくないのだから」 小鳥の話に、旅人はふと思い付きました。 小鳥を見ると愛らしい動きで小首を傾げました。 つぶらな黒い瞳は、どことなく面白がっているように見えます。 「どうして私が旅人さんに話しかけたのか、そんな顔をしているわね。旅人さんは嘘がつけない人ね」 「はは。よく言われるよ」 旅人がそう飄々と言うと、小鳥はまたからからと笑いました。 「そういう旅人さんだから、私は話しかけたのよ」 小鳥はひとしきり笑うと、そうだわ、と言って自らの長い尾を啄み始めました。 旅人が驚いて止めようとする前に、小鳥は自らの長い尾を一本取ってしまいました。 「大丈夫かい、自らの尾を取ってしまって」 「大丈夫よ。一本くらい無くなったって、またじきに生えてくるわ」 小鳥は小さなくちばしにくわえた長い尾を、旅人の手のひらに乗せました。 その尾は根本の鮮やかな黄色から、先端に向けて青の美しい尾でした。 「それ、旅人さんにあげるわ」 「いいのかい?」 「もちろんよ。旅人さんの旅路がいいものでありますように願った、お祈りの尾だから」 旅人がありがとう、というと、小鳥はどういたしまして、と笑ったように見えました。 旅人はもらった尾を帽子に差すと、小鳥に別れを告げまた歩き出しました。 しばらくすると、森の終わりが見えてきました。 旅人は帽子に差している尾を一撫ですると、笑顔で森を抜けました。 後ろで小鳥たちの合唱を聞きながら、大地を踏みしめていきました。
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