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しばらくすると埃を被った商人が手に何かを持って現れました。
「いやぁ、そろそろ掃除しねえとなぁ。こんなに埃を被るなんて参った、参った」
「それで。商人のおじさんは何を探してたんですか?」
話が逸れそうな商人の話を旅人は強引に戻します。
商人は「あ、そうだな!」と特に悪びれることもなく、右手に持っているものを掲げました。
それは長い年月を過ごしたのか、すっかり曇ってしまったガラス瓶でした。
きっちりと封も閉じてあり、何かの民芸品のようにも見えます。
「これは…?」
旅人の疑問に答えるように、商人は自慢げに鼻を鳴らして
「こいつには『妖精』が封じ込められてんだよ」
旅人はおもいっきり眉間にシワを寄せました。
「『妖精』…?」
「あ、疑ってんな? 俺も最初は信じられんかったが、こうやって瓶を振るとな…」
そういうなり、商人は曇った瓶を上下に振りだしました。
カツ、コツと中身が瓶にぶつかる音が聞こえます。
どこが「妖精」の証明になるんだろう、と旅人が考え始めたとき。
『…いってぇ! 瓶を振るな、この野郎!』
どこからともなく、少年の声が聞こえました。
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