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『夏目りこ!一般人男性と密会か!?』
週刊雑誌にスクープとしてでかでかと、しかも数ページに渡り特集されている記事を見て、呆れた。いや、何と表せばいいのやら。
店の椅子に座って見ていたら、お客さんとして来た近所のおばちゃんに雑誌を取り上げられた。
「あらあら、こんな事書いちゃって。双黒くんと利子ちゃんは夫婦だから当然なのにねぇ」
そう、この夏目りこは本名夏目利子。俺の妻である。事務所には言ってあるらしいが、それをまだ知らないマスコミからすれば今一躍有名なモデルが男と会っている事はスクープなのだろう。
おばちゃんは立ったまま読んでいる。
「椅子、貸しましょうか」
「いいのよ!買い物のついでだから!にしてもこれ綺麗に撮られてるわねぇ…。しかも昨日の事が記事になってる」
「マスコミって奴はそういうのが好きですからね。他人の迷惑を考えない。」
「これで利子ちゃんが質問責めされたら、何だか可哀相ね。これを機会に公言しちゃえばいいのに?」
「そこら辺は本人に任せてますから」
「そうなの?」
「ええ」
それから店を閉めて家に戻ってテレビを点けると、妻が記者会見をしようとしている所だった。
しかも、生放送…
『りこさん、彼とはどんな関係ですか?』
『か、彼は…』
『ご結婚はいつ頃ですか!?』
『あ、えと、』
いっぺんに答えられるわけがない。
何と言うのかじっと画面の向こう側にいる妻を見ていたら、マネージャーとアイコンタクトをして頷いた。
『か、彼は、大切な方です』
『私の、旦那様、です』
一斉に集れるフラッシュ。
こりゃあ、しばらく忙しくなる。
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