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僕がこの街で仕事をするようになって、もういくつの季節が過ぎただろう…
この街は不思議な街だ。
夜になり、帰り着く人たちがいる。
かと思うと、夜になってこの街にやってくる人もいる。
僕はその夜の少し手前の時間にこの街にやってくる。
地下鉄の改札を抜け、地下道から地上に出る。
まだ明るい時間ではあるが、街の空気が、「日中」が終わっていることを教えてくれる。
のんびりと一人歩く人もいれば、大きな犬を散歩している人もいる。
それともちろん、僕のように夜の仕事のために出向く人もいるのだろう。
まもなく僕は、この街に住んでいたとしても多くの人は通ることすらないような路地に入り、これまた小さな建物の階段を登る。
この僕の夜が、この小さなワインバー、『狐亭』で始まる。
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