神経衰弱

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私は眠っていました。 どれだけ眠っていたかは定かではありません。 一時間ほど寝ていたのかもしれないし、五分程度だったのかもしれない。 目覚めたときには、全く見覚えのない場所にいました。 私が今いる場所は、上も下もコンクリートで覆われた広い部屋です。 その部屋には、八個の大きな鳥かごが並んでいます。三畳くらいの広さの鳥かごです。 その中には、人が三人づつ入っています。 年齢も性別もバラバラ。 共通点は日本語が話せる、ということだけのようです。 私は、一番端の鳥かごの中で眠っていたのです。 起こしてくれたのは、二十歳くらいの若い青年でした。 「君、大丈夫かい?」 そう声をかけられ、私はまだ目覚めきれていない目で辺りを見渡しました。 「ここは…どこですか?」 「さあ、僕にもよくわからないんだ。 目が覚めたときはここに閉じ込められていた」 「閉じ込められてる?」 「ああ、ここは鳥かごの中だ」 そう言ったのは、柵にもたれて立っているヤクザ風の男でした。 男はこの状況に不満を隠せないようでした。 「やあ皆さん。初めまして」 変声機を使っているのか、とても低く、不気味なほどに丁寧な口調の声でした。その声は、天井に取り付けられたスピーカーから聞こえてきたのです。 「これから皆さんには、様々なゲームに参加していただきます。 ゲームは三人一組で行います。 そう、その鳥かごの中にいる三人がチームメイトです」 部屋は不安のざわつきで溢れました。 『これから何が始まるんだろう』 今ここにいる全員がそう思っているはずです。 私たちの隣の鳥かごの男性が 『早くここから出せ』 と叫びました。 「ご静粛に。 今からルールをご説明します」 「ルール? そんなの聞きたかねえよ。いいからさっさとここから出せよ」 「あなた方が無事生き残れたならば、その時解放しましょう」 「そんなもんする必要はねえよ。いいからさっさと出せよ!!」 その男に賛同して、皆口々に反論を始めました。 「聞き分けのない人たちですね。 いいでしょう、あなたたちを一番目のゲームプレイヤーにしましょう」 「そのゲームに勝ったら、ここから解放されるんだな?」 「ええ、もちろんです。 では、あなたたちには神経衰弱をやってもらいます」 「神経衰弱? 相手は誰なんだよ?」 「君の後ろにいる彼女です」
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