神経衰弱

3/4
前へ
/14ページ
次へ
そこにいたのは、さっきまでいなかったはずの少女でした。 歳は15歳ほど。 黒いワンピースを着ています。 髪は長く、とてもきれいな白です。 両足首と両手首には、鎖が千切られた拘束具を身に付けています。 私はここにいる人間の、誰からも感じられない『何か』を彼女は持っているように思いました。 男は後退り、黒服の少女に訊きました。 「お前、いつからいた?」 「私?私はさっき来たばかりよ。 それよりも、ねえ、早くやろうよ。 “ゲーム”」 不気味で、そして恐ろしく美しい少女の微笑みに、私は恐怖を覚えました。 「さあ、早く始めましょう」 少女はとても愉しそうに言って、地べたにトランプを、慣れた手つきで並べました。 男たち三人が地面に座り、ゲームが開始できる体勢になりました。 「で、ルールは何だ?」 「同じ数字のトランプを二枚揃えたらとっていく。 一番多くトランプを取ったほうが勝ちっていうのにしましょう。 後攻はそうね、あなたたちにあとを譲るわ。 そのほうが楽でしょ?」 男は何か言いたげなようでしたが、言葉を飲み込んでゲームを始めました。 前半。 ゲームは男三人チームが優勢でした。 チームの最初にめくる男性のトランプの柄を、後の二人が暗記、そして、二人目が引いたカードの柄を最後の一人が暗記をして取る。 そういったチームワークのお陰で、後半に差し掛かるまでにチームのトランプの枚数は少女をしのぐものになっていました。 「おいおい、これじゃあ楽勝なんじゃねぇか?」 「大したことねえじゃんかよ」 「嬢ちゃん、降参するならいまのうちだぜ?」 勝利を確信した男たちが、そう少女を笑いました。 「そうね。わかったわ。 今から本気をだすわ」 少女の口が、微かに笑ったように見えました。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加