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そこにいたのは、さっきまでいなかったはずの少女でした。
歳は15歳ほど。
黒いワンピースを着ています。
髪は長く、とてもきれいな白です。
両足首と両手首には、鎖が千切られた拘束具を身に付けています。
私はここにいる人間の、誰からも感じられない『何か』を彼女は持っているように思いました。
男は後退り、黒服の少女に訊きました。
「お前、いつからいた?」
「私?私はさっき来たばかりよ。
それよりも、ねえ、早くやろうよ。
“ゲーム”」
不気味で、そして恐ろしく美しい少女の微笑みに、私は恐怖を覚えました。
「さあ、早く始めましょう」
少女はとても愉しそうに言って、地べたにトランプを、慣れた手つきで並べました。
男たち三人が地面に座り、ゲームが開始できる体勢になりました。
「で、ルールは何だ?」
「同じ数字のトランプを二枚揃えたらとっていく。
一番多くトランプを取ったほうが勝ちっていうのにしましょう。
後攻はそうね、あなたたちにあとを譲るわ。
そのほうが楽でしょ?」
男は何か言いたげなようでしたが、言葉を飲み込んでゲームを始めました。
前半。
ゲームは男三人チームが優勢でした。
チームの最初にめくる男性のトランプの柄を、後の二人が暗記、そして、二人目が引いたカードの柄を最後の一人が暗記をして取る。
そういったチームワークのお陰で、後半に差し掛かるまでにチームのトランプの枚数は少女をしのぐものになっていました。
「おいおい、これじゃあ楽勝なんじゃねぇか?」
「大したことねえじゃんかよ」
「嬢ちゃん、降参するならいまのうちだぜ?」
勝利を確信した男たちが、そう少女を笑いました。
「そうね。わかったわ。
今から本気をだすわ」
少女の口が、微かに笑ったように見えました。
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