梅と鶯

6/21
前へ
/133ページ
次へ
又十郎の屋敷についても 簡単に述べておきたい。  まず向かって正面にどっしり門が構えてある。その門をくぐり抜けると屋敷邸内へと歩を進める事となるのだが、ここで真っ先に訪問者の目を惹くのが屋敷最前列に配した大きな一室であろう。この一室は来客や軍議等の大事な場合に使われているのだが、誰が来ても恥ずかしく無い立派な造りとなっている。床全面には、黒檀を張って古風な感じを醸し出している。これには古参(古くから仕える者)や老客達が事の外、喜ぶのだ。奥に連なる部屋と部屋とはお互いが廊下で繋がっていて、先程の軍議の間からも一本の長い渡り廊下が伸びていた。この渡り廊下にもさりげない心配りが見受けられる。 左右に吊るされた簾が揺れると、丁度中腹くらいに活けられた一輪の草花も呼応するかの様に何度もおじぎをするのである。歩きながら季の語らいを楽しむ事が出来る。  程よく穏やかになりながらこの廊下を渡りきれば気品漂う奥座敷が現れる。 生活の為の寝所や母屋等は左右に分かれた形で建てられていた。 まさに戰人には相応しい 佇まいと言えよう。 そうそう‥忘れていたが、この屋敷を南に進めば、ちょっとした宴にうってつけの日本庭園も拡がっていた。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加