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台風は時間を追うごとにひどくなっているようだった。
外からは嵐の吹きすさぶざわめきに紛れて、バケツが転がっていくような音が聞こえてくる。
部屋の窓はきっちり閉めきっているはずなのに、わずかな隙間から入り込んでくる風に、金魚の風鈴が反応しては音を響かせていた。
そんな中、ベッドサイドの灯りだけを残して、ふたりは抱き合っていた。
あの島のラブホテルで肌を合わせてからというもの、啓二は躊躇せずそれを求めてくるようになった。
しかも、頻繁に。
どこかへ出かけても、最終的には啓二の部屋でセックスをする。
そんな過ごし方が当たり前になっている。
今日子も、別段それに不満があるわけではない。
ただ今夜は、行為に集中出来ないでいた。
夕方からずっと、あの着信のことが気にかかっているのだ。
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