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その後はふたり抱き合ったまま、たくさん話をした。
それこそ好きな漫画のことから、アメリカの次期大統領選挙のことまで色々だ。
啓二は青年海外協力隊のボランティア員として、夏休みにマレーシアで井戸を掘った話をし、それが終わると社員旅行で行ったエジプトの、サハラ砂漠に沈んでいく夕陽の話を始めていた。
思い出話を熱く語る彼の瞳は、少年のようにわくわくとしていて。
今日子はベッドに横たわりながら、啓二の話に耳を傾けていた。
「――とにかくさ、日本で見るのと同じ太陽だとは思えないんだって! 大きさも、熱さも、何もかもが違うよ」
腕を大きく広げ、表情をころころ変えながら彼は話す。
そこで見た人々の暮らしぶりや、滞在中に考えた太陽光エネルギーの活用法などをまじえながら。
けれど、今日子にはつくづく、すごいのは太陽じゃなくて啓二の方だと思えるのだ。
まるで、啓二自身が巨大な引力を持つ星みたいだ。
彼の話を聞いていると、いつの間にかぐいぐいと引き寄せられ、一緒になって同じ夢を見ているような気分にさせられる。
彼の中にある夢や憧れが外にあふれて、周囲の人まで同じ色に染めてしまう。
そんな感じだった。
「いいなあ、あたしも砂漠の夕陽を見てみたい」
今日子はベージュ色の地平線に、真っ赤な夕陽が落ちていく様子を思い浮かべた。
きっと空をつくような巨大なピラミッドがあって、そのそばにはラクダもいるに違いない。
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