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今日子の朝は早い。
母親の世話焼きを期待できない彼女の一日は、弁当作りからはじまる。
もちろん自分用だ。
朝からしみったれた家事に追われながら、かといってオシャレにも手抜かりはない。
あらかた家事の終わった後、部屋の出窓から海を眺め、
片手間に髪を巻くのが今日子の日課になっていた。
オークル10の白肌に、
30分も時間をかけて巻いたエクステ。
そして〝キスしたくなる〟という売り文句に惹かれて買ったグロスは、まだ結果こそ出していないが、口唇をぽってりと厚く演出している。
今日子は鏡に向かって微笑みかけ、キメ顔を作ってみせた。
笑顔も、OKだ。
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