里美の誘い

2/6

448人が本棚に入れています
本棚に追加
/523ページ
今日子の朝は早い。 母親の世話焼きを期待できない彼女の一日は、弁当作りからはじまる。 もちろん自分用だ。 朝からしみったれた家事に追われながら、かといってオシャレにも手抜かりはない。 あらかた家事の終わった後、部屋の出窓から海を眺め、 片手間に髪を巻くのが今日子の日課になっていた。 オークル10の白肌に、 30分も時間をかけて巻いたエクステ。 そして〝キスしたくなる〟という売り文句に惹かれて買ったグロスは、まだ結果こそ出していないが、口唇をぽってりと厚く演出している。 今日子は鏡に向かって微笑みかけ、キメ顔を作ってみせた。 笑顔も、OKだ。
/523ページ

最初のコメントを投稿しよう!

448人が本棚に入れています
本棚に追加