『探偵』(前編)

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奏は持参したバックから一つのUSBメモリーを取り出したが、それにはなぜかラジオなどに付く、アナログな小さなアンテナが付いていた。 それをパソコンに差し込む。 するとUSBメモリーの中身が開き、奏はあるアイコンをクリックした。 そして現れたパスワードとID確認のウィンドウ。 「はい、はい、はい、のはい!」 リズミカルに二十を越えるキーを押した奏。 そのまま確認のボタンをクリックする。 「別次元へようこそ、ってね」 「おぉ、ヤクザもITの時代か」 感心する僕の視線の先には『城外組商品録』というページが出ていた。 「このUSBメモリーはあるパスワードを打ち込むと無線LANのように信号を出して、このページに飛ぶようになってるんですよ。でもこれは既存のネットワークシステムを通していないので、警察の監視に見付かることは無いのです。出所は闇オクですんで半信半疑だったけど、面白いですね」 「あれ、初めてだったの?」 「イエス、家のパソコンから個人データ取られたらイヤッスから」 「……奏って変なとこセコいよな。そんなのどうとでもして“くれる”のに」 「まぁ、ここのパソコンはプロテクトもガチガチだし。間違いが起こることは無いなと思ったんですって」 反省の色を見せない奏は、初めて開いたそのページのいろいろな所を開いていた。 そこは商品の販売をするだけのページで、薬は勿論違法DVDやヤミ金に武器の販売まであった。 横目で見た限りでも、その城外組というのが規模の大きな組だと分かる。 「警察も城外組のこのページを探してるみたいだけど、このUSBがないとここまでたどり着くことが出来ないの」 「でも闇オクで出回ってるんだろ?なら警察がそのUSBを手に入れるくらい出来るだろ」 「うーん。なんというか、所長はこれ見て分からないスか?」 椅子を移動させて画面の前を開ける。 別に白百合は視力が弱いわけでなく、今居る位置からもその内容は見ることが出来るが、詳しく見ろ、という奏の意思表示だった。 白百合は目を凝らして、ページを隈無く見る。 「あ、あぁ。そういうことか」
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