『探偵』(前編)

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城外組はこの辺の顔役的な存在で、周辺の暴力団やヤクザは城外組に怯えてはいる。 が。 それは同時に城外組の力を知っており、あのページも城外組ならばあれだけの物資を販売していると、信頼した。 探偵と同じだ。 こうした闇の市場ではいかに信頼を勝ち得るかで、財力が決まってくる。 財のある組は同時に強大な信用性を持つ、それが城外組だ。 その城外組が自らの組の存続を危ぶんで、そうした信頼を逆手に取る手法で保身に走ったのは、この場合の最善手の一つだったのだろう。 それに他の組やヤクザは引っ掛かり、一斉に摘発される。 城外組は裏で謝礼金を貰い、それを無くした麻薬の利益の足しにする。 さらにこの一斉摘発で同業者が減り、ここ一帯を牛耳ることが出来る。 それは警察も覚悟をしているだろうから、これが済んだのちに何らかの手を打つだろうが。 今はまだダークヒーローの城外組として、警察は利用し、城外組も利用していた。 「で、一番最初の話しに戻ると。今この辺りに麻薬は存在しないクリーンな町と言うわけです。城外組のダークヒーローっぷりで架空の麻薬は流通していますが、実物は存在しません。だから新田しずかの証言は過度な被害妄想が入っていると私は思いました」 結論を述べて、奏は差していたUSBメモリーを抜いて、元のネットワーク回線を繋いだ。 「長々と語りましたが。余は麻薬は存在しない、だから新田しずかの言うクラブでの薬の譲渡は無い。これで新田史朗とかいう人の身の潔白は示されました」 「……いや、でも彼女は薬らしきものを僕に提出した。それの梱包の仕方は覚醒剤そのものだった」 「うん?そんなアイテムが?むむ?外国人のバイヤーは城外組が片っ端から締め出しているから、薬が渡るはずは無いのに……」 顎に手を乗せて椅子をクルクル回転させて唸る奏。 白百合はしかたない、と立ち上がる。 「クラブシフトに潜入調査だ」 言って白百合は寝室兼自室の方に消えて行った。 「……てか、所長。是が非でもクラブに行く気だな、あたしが説明したとき若干苦い顔したし……はぁ、今日はお留守番かぁ。つまんない」 奏は後ろで手を組んで背もたれに体を預ける。 彼女の想像は当たっていた。 白百合は奏の説明を危機ながらも、内心ヒヤヒヤしていた。
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