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それからその手帳のページを見てから、組員に向き直る。
「ありがとうございました。極秘に捜査は行われますので、このあと来る“科学班”の指示に従ってください」
「か、科学班!?」
戸惑う組員の声を背に受けながらも女性は振り返らず、他の組員に事情聴取していた男性の耳元で短く言った。
「“外課の仕事になりそうだ”」
「なっ! 課長!」
短く言った女性は鑑識や男性を素通りして、組長室を出た。
シャツの第一ボタンを外し首元を緩めてふぅー、と息を吐く。
「課長!」
そうしているとすぐに駆けてきた男性警官。
女性はその声にやや不快な表情をしながら振り返る。
「殺人現場だ。大声を出すな」
「す、すみません……。でも、外課って……あれは単なる都市伝説みたいなもので━━」
「まぁ、名前だけは覚えとけ。外課が出てきたら、一般捜査機関はすべての捜査記録を外課に譲渡する義務がある……。それくらい知っておけ」
「いや、でも自分はそのような課に捜査を踏み込まれたことはありませんから……」
「三回」
「え?」
「お前は三回、外課に捜査を譲渡している。今回で四回目だな」
「え、あ、いや。な、何かの冗談ですか……?」
男性は戸惑いながらも、上司である彼女がそのようなことを言わないことはよく知っている。
だが男性は聞き返すしか無かった。
眉唾物だった外課に自分は三回も捜査介入をされている。
同僚の中はまだ誰一人として、外課に捜査を譲渡したことは無いのに、自分が三回も外課と接触しているなど信じられなかったのだ。
「今は気にするつもりは無い……。そうだ、異動やら歓迎会やら、今件やらでバタバタしたがお前に“健康診断”の再検査の通知が来ていたぞ」
「ええ!そんな、自分は医者から健康体と━━」
「まだ若いんだから、健康には気を付けろ。私のような歳になってから健康を意識しても遅いんだぞ」
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