『探偵』(前編)

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ユキはシロだな、と言うのが白百合小百合の見方だった。 言動はまだ幼く、その端々からユキがまだ“未成年である”と印象付けた。 ショートの赤い髪に、衣装はクラブ提供なのだろうが、露出の高いチャイナ服を着てはいるが。 白百合の目にはそう見えた。 何よりも新田しずかの証言にあるような人物ではなく、また薬を流すバイヤーとしても彼女は“信用ならなかった”。 彼女は相談した時にクラブへ入ってはいないようだが、ユキと接して分かった。 彼女のような子供に覚醒剤を進められても、誰がそれに手を伸ばすだろうか? それが大の大人なら尚更だ。 学生は未知の経験に貪欲だが、新田史朗のように社会の荒波の中を舵取りするような人は、こうした人物からの誘いに乗らない。 善悪以前に信頼感が皆無だからだ。 「お待たせしました。ははは、ベルを押せとマネージャーに怒られてしまいました」 舌をチロッと出してユキは早速水割りの酒を作り始める。 別に水割りとは言ってはいないが、それをすぐに手を付けてしまう辺りを見ると、それくらいしか作れないのだろう。 さっきの続きから、ユキがもし覚醒剤を新田史朗に譲渡しようとしても、子供に言いくるめられるわけもない。 いくら今の現状があろうと、彼は彼女から覚醒剤を譲渡されもしないし買いもしない。 「出来ました!」 「ん、あぁ。出来たね」 白百合はテーブルの方に目を向けると、そこにはグラスが一つしかなかった。 「あれ、ユキちゃんの分は?」 「あぁ……」 ユキは気まずそうに視線を泳がせ、白百合の方に近寄る。 「ごめんなさい、私、お酒アウトなんです。なので……」 手で壁を作り小さな声でユキは言った。 「そうなんだ。はは、まぁいいよ。僕だって飲めるタイプじゃないからね。ジュースとかは無いんだよね?」 ユキは頷いた。 「なら水割りの水で乾杯でもしようよ。それくらいは出来るだろ?」 白百合は水割りのグラスの口を持ちながら言った。 ユキは「はい!」と言って、ボトルの水を空いたグラスに注ぎ入れた。 「それじゃ、かんぱーい!」 「かんぱーい!」 水割りを一気に飲む白百合に、水を一気に飲むユキ。 互いのグラスが空になると、互いの顔を見合せ、吹き出した。 「あははははは!」 「くす、ふふふふ!」
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