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ソファーに寝転ぶ白百合の方に奏が椅子を回して言う。
『あの二人も』と白百合は額に手の甲を付けたまま呟き、勢い良く起きた。
『その論法だと、奏は僕のことが大好きってことになるよね!』
『……へっ?え、ええぇぇえええええぇぇ!!なん、なんですか!さっきまでのしんみりムードを自ら垂れ流しておきながら、それを一気にぶち壊すような発言は!!』
『いや、だって。僕は男の子だし~』
『いや、これはモラルとか。メンタルの問題です!』
奏は一喝し、白百合はへらへらと笑うのだった。
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クラブシフトに行く前に白百合小百合はすでに、ユキが新田史朗の実子であることを知っており、直接彼女と会話をし自分の調べた新田幸像と直感的な彼女へのイメージが固まった。
白百合はあれからユキが退勤するのを待っていると告げた。
今回の一件がユキが覚醒剤譲渡の犯人で無ければ、そもそも、新田史朗が“覚醒剤を使っている証拠も無い”。
新田しずかはあくまで覚醒剤を見せただけ。
それを譲渡したのが自分の夫の連れ子で、しかも、その彼女がクラブに歳を偽り働いている現状を彼女が知らないはずがない。
すべてに矛盾と疑念が浮かぶ。
連れ子の顔を知らないはずがない、髪の色が違うだけで見間違うはずがない、彼女の現住所を知るのは学院へ迎えに行った彼女が知っている。
以上により、新田しずかの依頼は白百合小百合の意向により、別の方向に向かう。
求められた以上を調べた提供する。
それが白百合探偵事務所所長白百合小百合の信念であり、彼の個人的な意思だった。
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「はぁ……あと二時間。事務所と往復するのは良いけどさ」
ぶつくさと呟く白百合。
頬はほのかに赤らみ、足取りはしっかりとしているが酔っていた。
「酔い冷ましも兼ねて夜風に当たりますか」
目についた公園に誘われるように入り、近くのベンチに腰掛けた。
「ふわぁ~」
間の抜けたため息を着きながら、白百合は足を投げ出す。
着ていた上着のボタンを開け、シャツのボタンも上から三つ開けて手団扇で胸元に風を送る。
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