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あたしの名前は伊藤華恋。
一応彼氏持ち。彼の名前は陸。
けど…。
あたしには、秘密があるんだ。
誰にも言えない秘密が…―――。
「華恋~。暇ぁ~?」
就業間際に、声を掛けて来たのは、同期入社の永井雛子。
「まぁ…暇だけど。」
苦笑しながら、華恋は答えた。
「聞いてよ~。」
「何?また愚痴なの?」
雛子がこう言って来る時は、大抵彼氏と喧嘩した時だから。
「…立ち話も何だし、呑みに行こうよ。」
…やれやれ。
「雛のおごりね?」
―――女ふたり夜の喧騒の中に消えて行く。
「で、今回は何?」
華恋は、生ビールを呑みながら、素っ気なく聞く。
「浮気だよ。」
「な~んだ。そんなのウチの陸に比べたら、可愛いもんじゃない?」
陸は女癖が最悪だ。
今夜だって何やってるのか、分かりゃしない。
「ほっとけば?」
華恋は言った。
「でもさ~、悔しいじゃないの?」
「じゃ、自分もしてみたら?浮気?」
雛は目を丸くして驚いた。
「華恋はあるの?浮気?」
「まさか。馬鹿馬鹿しい。」
陸に裏切られるのには、悲しいかな、慣れちゃったよ。
それよりも華恋の心を支配している人物がいた・・・-------。
華恋の上司。
しかも・・・女性。
名前は------川野碧。
黒いショートヘアに、丹精な顔立ち。
しかし・・・気性が荒い。部署内で碧の怒鳴り声が聞こえない日はないくらい。
「おい、山口。てめぇ何年働いててこんな凡ミスしやがるんだ?」
「す・・・すみません、川野主任。」
「すみませんで済めばケーサツはいらねぇんだよ。」
誰もが苦手な川野碧。
でも。
華恋はいつからか主任の姿を追うようになっていた・・・---------。
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