チャーリーへの鎮魂歌

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それでそこにロメオとジュリエットみたいに敵同士の男と女の恋愛がからむはずだったけど、まぁそんなことはどうでもいいことさ。始末が悪いのは、南部の白人が例の白い悪魔の組織を作るのが当たり前だってことが受けちまったってことだ。もちろん黒人は身に行かなかったが、親父たちは北部の仲間がこの映画に反対して前から抗議デモをしているのを聞いていたもんで、仕事をするのを止めちまおうって決めたんだ。だけどどこからかそのことが白人の耳に入ってしまってね。親父たちはこっぴどく殴られたうえ、背中に銃をつきつけられて無理やり演奏させられたのさ。膨れ上がった唇で吹くペットの音はさまにならなかったと言ってたよ」チャーリーは笑おうとしたが顔が途中でゆがんでしまった。ジムが聞いているのかどうかも、チャーリーには分からなかった。「・・・でそれからすぐにジョージア州にK.K.K.が集会を開いたってことが伝わってきてね。親父はそんな街に見切りをつけて、夜の闇にまぎれてまだ新しい州だったオクラホマに逃げてきたのさ。だが、もう親父はペットを吹くのは止めたよ。おまけに栄養失調で悪かった眼が見えなくなっちまった。それからギターを弾いて街を流すようになったんだ。ひとりで仕事ができるからね」チャーリーはそのことを話してくれた時の父親の顔を一生忘れる事ができないだろうと思った。
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