チャーリーへの鎮魂歌

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チャーリーはまだ時間があったが、まっすぐに歩道にまで張り出した、色あせた緑色の大きいシェードが特色となっているこのホテルにやって来たのだった。ふだんなら気軽に声をかけ合い、互いの消息を聞き軽口をたたき合うこの街の楽しい習慣が、今日は億劫に感じられた。チャーリーのいつもの艶のある褐色の膚は、今は陽にさらされた鞣革のようで、グレイのソフト帽に、同色の一目でそれと分かる仕立ての良い縞の入った三つ揃いの背広は五月雨でまだらになり、彼を柔和に演出する金属枠のモダンな眼鏡も、今は二十四歳という実際の年齢より老けて見える道具にすぎなかった。チャーリーはいつもと違ってホテルの通用口のある路地に入っていくことにした。俺は今どんな顔をしているのだろうかと彼は思った。ゴルゴダの丘に向かう黒い顔のキリストか?そのような妄想を振り払うように、チャーリーは頭を振った。その時に急に喉の奥が詰まり、彼はその痩せた身体を折れるくらいに曲げて咳こんだ。肺の深いところから響く、指を弦から滑らせてミスをした不協和音のように嫌な音だった。「ミスター・クリスチャンじゃないかね」と薄暗い場所からしわがれた声がした。チャーリーはその声の主に憶えがあった。このハーレムの主のような、盲目のカウボーイ・ジムと呼ばれる老ポン引きである。
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