チャーリーへの鎮魂歌

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「やぁ、ジム」チャーリーは声を絞り出すように答えた。「身体の具合でも悪いかね」とジムは心配そうにたずねた。「いつもとリズムが違うんで分からんじゃった」チャーリーは黙って頷いた。以前この老人と初めて会った時に、人間というものは顔かたち、声が皆異なるように歩き方もひとりひとり独特なものを持っているものだ、と聞かされていたからだった。「・・・しかもね、足音を聞けばそいつが今、どんな気持ちで世間を渡っているかも、わしにゃ分かるんだよ。人間も長く生きてりゃ他人様の生き様はおよそ見当がつくもんだがね。クリスチャンさんとか言いなさったね。あんた稀にみるいいリズムを生まれつき持っていなさるようだ。わしたちカラード(黒人)にゃ、他の連中と違って身体ん中にもうひとつ余計に筋肉がついていやがるって白い連中が見下すように言うのを聞いたことがあるだろう。あれを悪口と取っちゃいけないぜ。わしらは確かに、あの連中とは違うからね。ミスター、あんたのはめったに聞けないリズムだ。この街じゃ特にそうじゃ。みんなここに来たときはもうちっとましなものを持っていたがね。まだあんたは大丈夫のようだ。まあ、わしらにとっちゃ住みにくい世の中だ。年寄りのざれ言と思わずに気をつけなさいよ」とジムは言ったのだった。
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