チャーリーへの鎮魂歌

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チャーリーはやっとのことで息を吸い込んで、ジムの姿を見つけた。ジムはホテルの横に積んであるビールの空き箱のひとつに腰を下ろし、雨を避けていた。いつものようにくしゃくしゃの帽子と、制服のようにぴったりと身についた皺だらけのコートをまとい、厳重に縛った包みを膝の上に置いている。立てたコートの襟から鈍く光って見える丸いサングラスに隠れて、ジムの表情は分からなかった。「風邪でもひいたかね」ジムは気遣うように言った。チャーリーは口にからまるものを吐き捨てるように答えた。「肺が弱いんだ。餓鬼の時、トランペットをやって傷めたのさ」「親父さんが教えてくれたのかね。確か、あんたの親父さんはギター弾きだと言っていたが」チャーリーは頷いて答えた。「俺が生まれる前に親父はダラスの映画館でペットを吹いていたんだよ。例の声の出ない、動きのチャラチャラした映画のね」「ダラスにいたのかい」とジムは記憶の底を探るような口調で言って、静かに言葉をつないだ。
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