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一度だけ、彼に黙って吸った事がある。
酷く咳き込んで、涙目になった私を、筒井さんは知らぬ間に影から見ては笑っていた。
怒るでもなく、ふざけた様な物腰で馬鹿だなあと二つの瞳が言っている。
「学校で友達が吸ってたんです」
中学二年生の言い訳に、彼は面白そうに声をたてて
それはまた、若いなあ。
なんてその頃の私には分からない様な事を言った。
私は出来始めたおでこのニキビを、人指し指で突つかれてあ、と声を出した。
「青春の象徴だよ」
あの時、額を押さえる私をその場に残して、筒井さんは居なくなってしまったのだ。
冷たくなるばかりの掌を擦りあわせながら
そんな事を思い出していた。
信号は青に変わり、私のスニーカーは地面を蹴った。
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