帳の中1

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 筒井さんの立っている所は、ぽつんと穴が空いた様に一人だ。 何時もそうだが、いつでもスポットライトみたいで格好良い、と密かに思っている。  隣に立つと、スポットライトは消えて、 後にはぼんやりとした彼だけが取り残されている。  「おかえり柚子さん。」 彼は言いながらもなお、両手をポケットに突き刺して、何かを漁っていた。 顔は何もない、 彼が履いている革靴の爪先を向いていた。 「何を探っているの」 聞いても、んーと唸っただけだ。  暫くしてようやく現れた右手に、くしゃりと握られた飴玉を差し出しながら 「寒いねえ」 私の持った鞄を取り上げた彼の服装は 黒いタートルネックのウールセーターに、 青く掃き古しのジーンズだけと、十二月のこの時期には寒すぎる。  私は飴玉を口に放り込みながら、自分の首に巻いたマフラーを取って その彼の隠された首にかけた。
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